今、高級食パンがブームです。多くの事業者が参入し、全国で開店ラッシュ状態となっています。どの店も美味しいと評判ですが、そんな高級食パン業界から「乃が美」「銀座に志かわ」「ジャパンベーカリーマーケティング」の3事業者についてビジネスモデルの観点からその違いを比較してみました。
乃が美
高級食パンの先駆けと言われる乃が美は、代表の阪上さんが老人ホームで聞いた「食べるのが何よりも楽しみだけど朝食のパンの耳が固くて食べられない」という悩みや、卵アレルギーの息子さんがパサパサのパンしか食べられないという悩みを何とかしたいと思ったのがきっかけでした。坂上さんはパン作りは素人でしたが2年間かけて試行錯誤し、ついに耳まで柔らかいふわふわの食パン製造法を編み出して乃が美を開業しました。
現在、全国に129店舗を展開しています。「生食パン」にこだわり、全国の店舗には工場を併設しています。また、乃が美の理念に共感し、ともに乃が美ブランドを磨き上げることのできる非常に限定されたパートナーとだけ提携して全国への出店を行っています。
そんな乃が美のビジネスモデルのポイントは「理念の共感」だと思います。これにより軸はぶらさずビジネスの規模拡大や軌道修正を行える強さを持っているように感じます。

銀座に志かわ
銀座に志かわの食パンは、パンには不向きとされるアルカリ性の水を使った特殊な製法によって、淡雪のようなしっとり感とほんのりした甘さを実現しているのが特徴です。
銀座の老舗をイメージした店舗や高級感ある包装から「贈り物」や「自分へのご褒美」として人気があります。
このようなイメージとは裏腹に製造法はとても科学的です。気温や水温など熟練のパン職人が経験で判断するようなことを細かく数値化して評価し、また本部からネットワークカメラで品質チェックするなどの工夫により素人でも短期間のトレーニングで高品質なパンを安定的に製造できる仕組みを実現しています。これにより迅速なフランチャイズ展開が可能で、現在急ピッチで店舗数を増やしています。
そんな銀座に志かわのビジネスモデルのポイントは「計算されたFCモデル」だと思います。本体は三重県で飲食チェーンを展開する企業なので計算ずくでビジネスモデルを構築しているように感じます。

ジャパンベーカリーマーケティング
ジャパンベーカリーマーケティングが手掛けるパン屋は、『考えた人すごいわ』『どんだけ自己中』『まじヤバくない?』といった奇抜な店名や店舗デザインで有名です。ビジネスモデルは前述した2社と大きく異なり「パン屋の開業プロデュース業」です。
パン屋を開業したいオーナーの個性や地域の特性を考慮して1件1件オンリーワンのコンセプトを企画し、最適な店舗デザインやパンを開発するのが特徴です。さらに「経営」や「マーケティング」もサポートし、製パン未経験者が町のパン屋を開業して成功できるように全面的なバックアップをしています。
そんなジャパンベーカリーマーケティングのビジネスモデルのポイントは「優秀な個人店経営者の育成」だと思います。ジャパンベーカリーマーケティングのやり方を見ると、ここに依頼したオーナーは実践の中で多くのノウハウを学び、経営者として大きく成長するのではないかと思います。

以上、高級食パン事業者3社のビジネスモデルを分析してみました。同じ業界内のライバル同士ですが、ビジネスモデルはこれだけ異なるというのはとても面白いですね。